慶応義塾大学医学部教授・医学・理学博士
井上 浩義(プロフィール

井上教授コラム

大変に御無沙汰をいたしました。書きたい話はたくさんあったのですが、時間がなく、気付いたら、年も改まり、如月となってしまいました。

ようやく、アーモンドの治験が終了しました。1月14日(土)です。最後まで、アーモンドを食べ続けた被験者の皆さん、ありがとうございます。また、協力して下さった看護師の皆さん、厚くお礼申し上げます。

さて、このアーモンド治験、大成功でした!!!びっくりマークをこんなに付けるとあまり品が良くないですよね。でも、それほど良い結果でした。

治験は、被験者として8名の成人男女(平均年齢42.4歳)に5か月間アーモンド(23~25g/日)を摂取頂きました(この8名の摂取率91.2%)。なお、この8名の他に3名いらっしゃいましたが途中で脱落されました・・試験期間が長かったですからね。そして、その効果を体重、腹囲、血液検査、加齢物質AGE濃度などを指標として解析しました。結果は、5か月間の摂取によって、体重は8名の平均で2.9㎏減少し、腹囲は平均で1.8㎝減少しました。そう、この数字を言っても、皆さん、なかなか驚いて下さらないのです・・皆さんは、ダイエット効果と言えば10㎏以上痩せることが目標!?しかし、急激な体重減少は、却って健康を害する場合もあり、また、リバウンドの可能性も高くなります。長い時間かけてゆっくり痩せていく。これが良い減量なのです。

そして、抗加齢物質AGEの値は・・次回のお楽しみです。

今回はAGEs(エージーイー)と美容の話です。美容も特に、皮膚の話をしましょう。
皮膚は、身体の表面を覆う約1.6平方メートルの器官です。皮膚は、表皮、真皮、皮下組織から出来ていますが、毛髪、爪、汗腺なども皮膚の一部です。

年齢を重ねると、男女ともに、シミ、皺(しわ)、たるみ、カサカサ感などが増え、更には、脱毛や白毛化が進みます。皺やたるみは、皮膚の弾力を作り出すコラーゲンやエラスチンなどの量が減ったり、変形したりした結果です。これらのコラーゲンやエラスチンなどは日本語で膠原繊維(こうげんせんい)や弾性繊維(だんせいせんい)と呼ばれるように細い糸のような形をしています。そしてこの糸が網状に並んで皮膚の下地部分を作っているのです。若い時や皮膚が健康な時は、この糸が細く、絹織物のように柔らかな構造を取っています。しかし、年を重ねたり、何らかの原因(例えば、紫外線や酸化ストレス)で、皮膚の健康を損ねた場合には、1本1本の糸が結びついて太い糸になり、その織り(糸の絡み)も同じ方向を持たずに、不規則になります。この糸と糸が結びつかせてしまうのが、AGEsなのです。これまでも書かせて頂いたように、AGEsは糖(例えばブドウ糖)がタンパク質(コラーゲンやエラスチンなど)にくっついてできる物質です。コラーゲンやエラスチンがAGEs化すると、糸同士を結び付けて太くしたり、糸を硬くしたりします。硬い糸では柔らかな布は織れないように、AGEs化したコラーゲンやエラスチンで出来た皮膚は弾力がなく、変形(皺やたるみ)し易くなります。

前号にも書きましたが、アーモンドには身体の中のAGEsを減らす作用があります。AGEsはゆっくり出来てきますから、数日食べて効果が出るようなものではありませんが、長い期間、食べ続けることによって、美しい肌が期待できるかもしれません。

*8月に始めたアーモンド摂取予備治験(ヒト試験)は10月に2ヶ月の区切りを迎えました。まだ誰も脱落者は出ず、順調にアーモンドを食べ続けて下さっています。今のところ、体重の減少は平均で1.1㎏ですが、これから更に4ヶ月。結果が楽しみです。

 前回、書かせて頂きましたように、身体の中のAGEs(エージーイー)は食事によって増えていきます。一方で、身体の中でも、タンパク質と糖によってAGEsは作られます。そして、このタンパク質は身体の中のどんなタンパク質でもよいのです。身体の中に多いタンパク質といえばアルブミン、コラーゲン、エラスチン・・・どれも糖と結びついてAGEsを作ります。特に、糖尿病の方は、インスリンの働きが悪く、食事によって増えた糖が筋肉などに蓄えられず、血液の中をいつまでも廻り続けていますから(これをインスリン抵抗性と言います)、この余分な糖とタンパク質が結びついて、AGEsができ易くなります。

近年、血糖値の代わりに糖尿病の診断に多く用いられていますHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)はAGEsの仲間です。血糖値は検査数日前の食事等に気をつければ、検査の時にうまくごまかすことができます(?)が、HbA1Cは検査前1か月以上の血糖の状態が反映されますので、言い逃れができない(?)のです。

さて、この身体の中でできるAGEsをできにくくする働きがアーモンドにはあります。例えば下の写真はタンパク質と糖だけ(写真左)と、タンパク質と糖にアーモンドエキスを加えて(写真右)、37℃(体温)で1週間放置したものです。アーモンドエキスを入れた方はAGEs特有の色である褐色が明らかに薄いことが分かります。つまり、アーモンドのエキスがAGEsをできにくくしているのです。

DSCN1629.JPGのサムネール画像


なお、AGEsは、タンパク質と糖に「熱」を加えてできるものとの解説がしばしばみられますが、これは少し間違っています。AGEsはタンパク質と糖があれば体温程度でも十分に出来てくるのです・・だから、身体の中でも。
 次回は、ちょっとしつこいようですが、AGEsにこだわって、AGEsと美容の話をさせて頂きます。

 前回は、アーモンドが身体の中のAGEs(エージーイー)を減らす効果があるというお話をしました。身体の中のAGEsは、2通りの経路で増えていきます。①食物の中のAGEsが身体に溜まる、および②自分の身体の中で糖とタンパク質によって作られる、です。今回は①の食事によって身体に溜まるAGEsの話をしましょう。

 

 食品のうち、褐色や黒色をした食べ物にはAGEsが含まれます。このエッセイは食品会社様のHPに掲載されるので、具体的な品名は避けましょう・・想像してみて下さい。食事で摂ったAGEsの約7~8%程度が身体の中に溜まると言われています(その他は、腎臓から排泄されます)。合計すると、身体の中に溜まったAGEsの60%程度は、食品から取られたものだと言われています(ということは、身体の中で作られたAGEsは40%程度)。

 

 それでは、身体の中のAGEsを増やさないために、AGEsを含む食品を食べないようにしたら良いのでしょうか?・・それもひとつの方法だと思いますが、AGEsは多くの場合、旨味の成分なのです。ですから、AGEsを抜いた食事は非常に美味しくありません。昔、ある食品メーカーさんでAGEsを取り除いた製品を作ったのですが、不味くて食べることができませんでした。豊かな食事をしながらAGEsの摂取を減らす・・このためのひとつの方法がアーモンドです。アーモンドの成分は、AGEsと強く結合します。従って、食事にアーモンドを使用したり、副食としてアーモンドを摂ると食品の中のAGEsと結びつき、腸管からAGEsが吸収されるのを妨害してくれます(その結果、AGEsはそのまま糞便に出てしまいます)。

 

 下の図は、AGEsとアーモンドの成分が強く結合している測定結果です。なんですか?何故、これがAGEsとアーモンドの結合を示しているか分からないって・・すみません。このグラフは私の自己満足です(汗)・・この結果が出た時に、凄く嬉しかったので、ちょっと出してみました。なお、アーモンドの薄皮にも同じようにAGEsと強く結合する成分が含まれています。

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次回は、身体の中でできるできるAGEsをアーモンドの成分が抑える話をします。

*お知らせ
平成23年9月28日(水)のTBSテレビ「はなまるマーケット」でアーモンドが取り上げられます。私も少し解説をしています。
お手すきの方は、是非、ご覧下さい。

前回は、生活習慣病やアンチエイジング分野で、注目を集めている物質にAGEs(エージーイー;日本語では終末糖化産物)があり、身体の中からそのAGEsを減らすのに、アーモンドが役に立つと書きました。
AGEsは、タンパク質と糖が結びついたものです。ヒトの身体はタンパク質、脂肪、無機物質などでできています。また糖は、我々の食事の中心である炭水化物が分解されたものです。従って、身体の中にはタンパク質と糖がたくさん存在します。ですから、ヒトは誰でも身体の中にAGEsを持っているのです(悪者じゃないじゃない?!)。しかし、糖尿病で、健常なヒトよりも身体の中に糖が多いヒト、あるいは加齢によって身体の外にAGEsを排出できにくくなったヒトは、身体の中にAGEsを貯めこむことになります。
身体の中に溜ったAGEsは、糖尿病血管合併症(糖尿病による失明や透析導入)や、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病など)の原因になることが知られています。また、美容分野でも、シワやくすみ、あるいは皮膚のタルミの原因になります。ここらあたりは、10月に発表の日経ヘルスプルミエ2011年秋号に私がコメントしています(書店で目に留まったら立ち読み・・買って下さい!)。
身体の中からAGEsを減らすために、アーモンドはどのような働きをするのでしょうか。次回に続きます。

*お知らせ
8月18日(土)から、アーモンドの抗肥満および抗AGEs効果を検証するために、予備的な治験(ヒトでの試験)を開始しました。アーモンドをご提供頂きました株式会社デルタインターナショナル様、ありがとうございました。7名の男女が、毎日23粒(約23g)のアーモンドを6か月間食べ続けて下さいます。我々は、アーモンドを食べ続けることで、血液データ、体重、腹囲、血中AGEs濃度、および皮膚の状態がどのように変化するか調べます。結果は来年2月に出ます。この予備治験がうまくいけば、より大きな治験に入ることができます。良い結果が出ますように(祈)!
 

放射線の話は前回で終了しましたが、その後も、牛肉からセシウム137が検出されました。必ず「食の安全」の問題はこれからも続きます。私たち研究者は食物連鎖の高い位置にいる家畜については、どこかの時点で放射能汚染が見つかるのではないかと予想しておりました。但し、私たちの予想は、牧場の多くが地下水を使うことから、飲水が汚染源になるのではないかと思っていました。稲わらというのは床敷きに使うのであって、食べるものではないと思っていましたので、まったく予想外でした・・現場を知らない怖さです。また、先週(7月23日)のTBSテレビの報道特集(17:30~18:55)で、私は「汚染牛も肥育期間を延ばせば、セシウム137は排泄されて、出荷できるようになります」などなどのコメントを述べたのですが、その後、霜降り牛は肥育期間を延ばせないと農家の方がおっしゃっていました。またまた、現場を知らないコメントでした。すみませんでした。

 さて、アーモンドの話です。近ごろ、NHKの「ためしてガッテン」やフジテレビの「とくダネ!」でアンチエージング関連物質として、AGEs(Advanced Glycation End-products;日本語では終末糖化産物)が取り上げられ、身体の中のAGEsを減らすことがアンチエージングに重要だとの認識が広がってきました(AGEsに関心が高まることは、長年、AGEsの研究を行い、血液中のAGEsを測る試薬を販売している私としては嬉しいことです)。アーモンドには、このAGEsを減らす作用があるのです!!次回はその話をさせて頂きます。
 

福島第一原発事故で問題となっているヨウ素131(I-131)は身体の中に入ると首のところにある甲状腺に溜まります。下の写真は甲状腺にヨウ素131が溜まった様子を写真で撮ったものです。


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ちなみに、この写真は原発事故での写真ではありません。甲状腺の病気の治療のために、ヨウ素131を投与した時の写真です。もうひとつ、セシウム137(Cs-137)も身体の中に入ると全身に分布してしまいます。ただ、こちらは尿から体外へ排泄されるのも早いことが知られています。
さて、最後に、原発事故後、たくさんの方々がマスクをされているのを見かけますね。内部被ばくを防ぐには重要なことです。ただ、放射性物質は通常のマスクではほとんど素通りしてしまいます。放射性物質の吸い込みを防ごうとすると、タオルなら4つ折にし、木綿のハンカチなら16折にして、水でぬらして固くしぼり、口や鼻を保護する必要があります。これは、結構、息苦しいです。

遅くなりました。放射線の話の3回目です。今日は、放射性物質が身体の外側にある時の影響(これを外部被ばくといいます)について、書かせて頂きます。放射線は、電気によって作られる場合(病院で使われるレントゲン写真やCTなど)と今回の福島第一原発事故のように、放射性物質から出てくる場合とがあります。電気によって作られた放射線の場合には「外部被ばく」だけに注意を払えばよいのですが、放射性物質の場合には、身体の外にある時は「外部被ばく」に注意し、身体の中に入り込んだ時には「内部被ばく」に注意しなければなりません(下図を参照して下さい)。

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「外部被ばく」を防ぐ方法は幾つかありますが、肝心なのは、放射線が出ているものと距離を取ることと、放射線が出ているものとの間に遮へい物を置いてやることです。距離を取るというのは、下の図のように、放射線は距離を2倍にしてやると放射線があたる量は4分の1になります。3倍ですと9分の1です。4倍ですと・・そう・・16分の1です。また、放射線はその種類によって遮へいできるものが違ってきます。福島第一原発事故で問題となっているヨウ素131(I-131)とセシウム137(Cs-137)の場合には、ベータ線とガンマ線という2種類の放射線を出します。ベータ線の場合には、コンクリートやプラスティックで止まってしまいますが、ガンマ線の場合には、鉛や鉄などの金属が必要になります。

最後に、放射線や原子力関係の講演で、よく「自然の中にある放射線は、身体に馴染んでいるから危険ではないが、今回の原発事故で出てきた放射線は、危険なんでしょ?」と尋ねられます。地球上にもともとある放射線(自然放射線)と人類が作り出した放射線(人工放射線)とは違いがありません。性質も同じで、危険性も同じです。
 

放射線の話の2回目です。今回は、福島第一原発事故とは関係なく、地球が誕生した時から、我々の身の周りにはたくさんの放射線が飛び交っていることのお話をします。これを自然放射線といいます。私たちの地球ができた46億年前から、地球にはたくさんの放射線が存在しました。現在の人類は、①宇宙からやってくる放射線(宇宙線といいます)、②土の中に含まれる放射性物質から出てくる放射線、そして③空気の中に含まれる放射性物質から出てくる放射線をいつも浴びていることになります。これは原子力など使われなかった縄文時代や江戸時代の人たちもまったく同じように浴びていました。例えば、①の宇宙線は我々の眼にはオーロラとして見ることができます。また、②の土の中の放射性物質は地球上のすべての生物の中に取り込まれています。名古屋大学名誉教授の森千鶴夫先生からお借りした写真をご覧下さい。イメージングプレートといって放射線があたると赤くなるフィルムがあります。これに木の葉を一晩置いておくと(写真右)、葉脈に沿って放射線が出されていることがお分かりだと思います(写真左)。これは人間でも同じです。イメージングプレートの上に一晩寝るとこのフィルムは真っ赤になります。これは何度も書きますが、現代人でも古代人でもまったく同じです。人類が放射線を見つけたのは1895年とわずか116年前ですが、1700万年前、ヒトが誕生した時から、ずっとヒトは放射線と共に暮らしてきたのです。
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このコラムの責任者から、放射線の話を書いてよいとの許可を得ました。
ありがとうございました。

私は永らく放射線に携わっており、「知りたい!医療放射線」や「基礎医学・生物系の同位体実験」(いずれも慧文社刊)などの放射線に関する著書や本年3月21日に発売されたばかりの「改訂版放射線のABC」(日本アイソトープ協会編)の編集を担当しております。
また、これまでにIAEA(国際原子力機関)での講演など、80回以上の放射線に関する講演も行っています。


福島第一原発の事故が、原子力事故で最悪のレベル7(0~7までの8段階評価;国際原子力事象評価尺度)であることが発表されたのが、4月12日でした。
過去のチェルノブイリ事故と同じ程度になったことになりますが、実際に飛び散った放射性物質の量は10分の1以下ですので、過大評価だとの批判も聞かれます。
ですが、チェルノブイリ事故は25年前のできごとです。
技術が進んだ現在では今回の規模でも十分に世界的な影響が大きく、重大な事故であるという判断だと思います。


さて、このコラムでは、原子力発電所の構造や事故原因など難しい内容は省いて、福島第一原発事故が、私たちの身体によくないことをするのではないかという点に絞って書かせて頂きます。
今回は3つの項目に分けて解説させて頂きます。


(1)今回の事故とは関係なく、地球が誕生した時から、我々の身の周りにはたくさんの放射線が飛び交っていること(これを自然放射線といいます)、(2)放射性物質が身体の外側にある時の影響(これを外部被ばくといいます)、そして、(3)放射性物質が身体の中に入った時の影響(これを内部被ばくといいます)、です。


次回からこの3つの項目を写真や図を使って解説していきます。
この放射線コラムは短期間で連載します。
もし、原子力・放射線に関する質問などがある方は、デルタインターナショナルさんまでメールでお寄せ下さい。

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